財産が少なくても揉める…という話。

「うちは遺産もないし、みんな仲が良いから、遺言なんか作る必要はない」でしょうか?

人が亡くなると、必ず法定相続人全員に相続権が発生します。法定相続人というのは、例えば父親が亡くなれば、法定相続人は母親と子ども全員です。「相続権が発生する」ということは、誰でも自分の相続持分を正当に主張できることを指します。
ところで、全員が相続権を主張したときに、分ける財産があればよいのですが、相続財産が、例えば自宅不動産のみであった場合、不動産というのは、共有状態にはできても、切り分けて所有するのは難しく、また、仮に分筆などで切り分けることができたとしても、資産価値は下がることになります。

また、遺産分配の話し合いの途中で、過去の生前贈与(特別受益)を掘り起し、「相続財産の前渡しだ!」などと主張して、いわゆるドロ沼のような争いに持ち込むようなケースについても、相続財産の多寡にかかわらず起こり得ることです。
日本経済新聞(平成26年10月28日朝刊)に書いてあったのですが、司法統計によれば、平成26年1月~9月に家庭裁判所の遺産分割調停等が成立した件数は約6200件で、このうち、遺産が5000万円以下の事例は4700件と、全体の75%を占め、さらに遺産が1000万円以下の事例が約2000件もあったそうです。

ちなみに平成25年は、1年間で調停等が成立したものが約9000件、そのうち遺産5000万円以下のケースは6700件もあり、この件数は、10年前の2003年と比較すると、50%以上も増えているそうです。ちなみに、遺産が5000万円超のケースは、平成3年も平成25年度も約1600件程度と、ほとんど件数に変動がなく、これは、遺産がたくさんあると、遺言や生前贈与など、相続対策をとっているところが多いことが理由であると解説されていました。

遺産分割調停は、家庭裁判所に申立てをすることになりますが、調停はあくまでも相手が話し合いに応じることが要件です。相手が調停に出てこなかったりすると、調停はできません。また、調停は通常、互いの迅速な譲歩がない限り、少なくとも数か月は続くことになりますが、血を分けた親族同士で、お金のことについてあれこれ言い合いをすることになり、精神的にもかなりの負担になり、この調停をきっかけにお家断絶になることも、別に珍しいことではありません。

遺言なんて大げさと思う気持ちはわからないでもありません。しかし、遺言を作っておくことで、無用な争いが少なくなることも確かです。子どもや孫たちが、将来、末永く仲良く親族が付き合いを続けていけるようにするために、自分の死後の財産の振り分けを法律的に有効な書面にして遺すことは、決して大げさなことではなく、むしろ残された人たちへの思いやりであると、私は考えています。

 

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