成年後見の特徴とメリット・デメリット

○成年後見の特徴

成年後見制度は、制限行為能力者(自分だけでは完全な意思を発信できない人のことを示す、民法の言葉です。)が、うまく自分の意思を伝えられなかったがために起こる、財産上の危険や、契約上の危険を避けるために使われる制度です。
たとえば、皆さんは、こんなときに利用を考えることになるかもしれません。

  1. 遠方に住んでいる母は、訪問販売の悪質商法に対し、いくつも契約を交わしており、ある日実家に戻ると、大量の健康食品が部屋中にあり、通帳のお金が目減りしていることがわかったが、遠くにいるため、管理が難しい。。。

  2. 週2回、ヘルパーでうかがっている一人暮らしの高齢の方が、火をつけっぱなしにしていたり、夜中に徘徊したりして危ないので、そろそろ、見守りのある施設に入所したほうがいいのではと思ってはいるが、施設の入所契約をしてくれる人が周囲にいない。。。

  3. 親戚が亡くなり、父が相続人の一人であることが発覚したが、父は寝たきりで話すこともできないため、遺産の分割ができない。。。

  4. 施設に入所している母の入所費用のために、母の定期預金を解約しようとしたところ、銀行から「ご本人の意思を確認しないと解約できません。」と言われてしまった。。。

上記のようなことが起こってしまったとき、家庭裁判所に申立てをして、代わりに財産管理をしたり、契約を締結してくれる人を決めてもらうことによって、お困りごとが解決する場合があります。

○成年後見制度の類型

人の意思の発信の能力は、人によって千差万別です。後見制度は、その制限行為能力者の意思発信力を、次の3類型に分けていて、その方にできるだけ過不足のないフォローを行えるようにしています。

  1. 後見類型…意思能力がほぼない状態が続いている方。
  2. 保佐類型…意思能力がはっきりしているときと、そうでないときは、五分五分くらいの方
  3. 補助類型…意思能力はだいたいはっきりしているが、財産を適切に管理したり、難しい契約ごとは不安な方

これらの3類型を、「①どういう流れで」、「②誰が」決めるかというと、それは、「①家庭裁判所への申立てを受けて」、「②家庭裁判所が」決めることになります。
家庭裁判所は、申立てのときに提出した制限行為能力者の財産状況、年単位・月単位の収支状況、親族の状況、医師の診断などの資料をもとに、その人に最もふさわしいフォローのしかたを決めていきます。

○成年後見制度利用のメリット・デメリット

成年後見制度は、判断能力の低下した方(以後、「ご本人」と書きます。)が、普通の生活を送ることができるようにサポートする制度です。したがって、メリットもデメリットも、基本的には、「ご本人の財産や身の上を守ること」を前提に考えられています。したがって、デメリットの部分は、どちらかというと、後見人等になった人が感じる部分が多いかもしれません。

メリット

  1. ご本人の権利が、法的な観点からフォローされます。
    たとえば、上記のケース3で、相続人の地位を持っているご本人が遺産分割協議をする際、原則として、ご本人が法的に有している相続割合については、それを守るように後見人が主張しなければならず、安易に相続権を放棄しないようにします。それから、上記のケース4で、ご本人の生活のためであれば、定期を解約することができます。

  2. 裁判所の監督機能があります。
    後見人、保佐人、補助人(以後、「後見人等」と書きます。)は、裁判所の監督のもとに業務を行います。日常では、ご本人のために使ったお金や契約はすべて記録するなどして、適切に管理することが後見人等に求められていますから、比較的安心度合が高いと思われます。(100%ではありませんが、見知らぬ人がやりっぱなし…というよりはずいぶん安心度が高いですよね!)

デメリット

  1. 職業の制限に該当する場合があります。
    ご本人が、会社役員や各種士業その他一定の職務に就かれている場合、後見や保佐類型の方々は、その職業に就けなくなります。

  2. 後見人等の業務は、長期間に及びます。
    成年後見制度を利用することになると、ご本人に後見人等が選任されますが、この後見人等の業務は、原則として、ご本人がご存命中、続くことになります。例外は、ご本人の判断能力が復活したときです。
    ちなみに、後見人等が身体や地理的な事情で、どうしても後見人等の事務を続けられないときは、家庭裁判所の許可を得て、後見人等を辞することができますが、必ず、代わりの後見人を立てることになります。(後見のあてがないときは、裁判所が候補者を探してくれるときもあります。)

  3. 後見人は、なりたい人がなれるわけではありません。
    後見の申立ての際、後見人等の候補者をあげておくことができます。恐らく、これまで身近にお世話をされてきた方を候補者にされることがほとんどでしょう。しかし、それを選ぶのはあくまでも家庭裁判所です。家庭裁判所は、ご本人の財産管理や契約行為をするのにいちばん適当な人を、ご本人の側から検討して判断します。したがって、候補者でない方が後見人等に選任されることがあります。

  4. 後見の申立てを途中でやめる場合、家庭裁判所の許可が必要です。
    例えば、ご親族を後見人候補者として後見等の申立てをした際、家庭裁判所から、別の候補者にするという判断がなされたり、さらに監督人をつけたりする判断がなされることがあります。そうなりそうなときに、「え?自分が後見人になれないの?だったらやめます。」といって申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可を受けなければなりません。

  5. 後見人等の業務が不適切な場合、民事上、刑事上の罰を受けることがあります。
    ご本人の財産を、ご本人のため以外のことに使い込んだりすると、後見人等を解任され、さらには、民事上の責任を負ったり、刑事上の罪による罰則を受けたりすることがあります。

○まとめ

後見制度を利用することになると、以上のとおり、ご本人の財産管理や契約関係を、慎重に行う必要がありますから、「面倒だなあ」と思うこともあるでしょう。しかし、先にも述べたとおり、この制度はご本人のための制度なので、どうしてもこのような厳格にならざるを得ないというところがあります。

しかし、ご本人の財産を適切に管理しておくということは、ひるがえってみますと、ご本人の死後、相続人や受遺者の皆さんは、相続財産を毀損なく譲り受けることができるということでもあります。
相続の際、兄弟姉妹で、「あのときのお金はどうした!?」などという骨肉の争いを避けるために、生前、きちんと管理しておくことは、親族間においても必ずプラスに働くことになるということを、業務を通じて実感しています。

 

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