【ひとくちメモ】数次相続開始後の数次相続人による相続分譲渡の可否

2015-06-12

時々ご相談があるたびに勉強しなおす事項がありまして、タイトルの件がまさにそれです。

ある人(甲)が亡くなり相続が発生したが、何もしないでいるうちに、その相続人の一人(乙)が亡くなった。

乙の相続人ABは、甲の相続に関与したくないので、乙の相続分を譲渡したいんですが、というものです。

この時に出てくる「相続分の譲渡」という文言は、よく聞く言葉ですが、民法にかっちり定められている言葉ではありません。

905条に「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは…」という文言があるので、「そうなのか。遺産分割前には相続分を譲渡することができるんだ~」と解釈している、というわけです。

そこで、その相続分の譲渡を、相続人乙がするんじゃなくて、乙の相続人ABがすることはできますかということなのですが、あたかもできそうですが、できないのです。

相続が開始したときは、遺産分割協議が行われるまでは、相続人全員に、法定相続の割合で遺産が収まっています。そして、民法では、共有されている遺産は、遺産分割という方法をもって初めて、みんなで自由にその取得者や割合を決めることができるということになっています。

一方で、「相続分の譲渡」という行為は、民法に特段の規定がないため、「契約」であると考えられています。つまり、「申込みと承諾」があって初めて成立する効果なのです。したがって、すでに亡くなっている乙が、契約を結ぶことはできません。

乙の相続人ABが乙の相続人として契約を結ぶことは可能でしょうか?

これもできません。乙の相続権は、遺産分割協議が行われるまでは、乙の法定相続分は不確定です。不確定は権利をもとに、sの相続分を譲渡することはできません。

具体的に言いますと、登記をする場合は、甲の遺産分割協議をしないのであれば、①甲の相続人の法定相続割合とする登記をする。②確定した乙の相続分を第三者に譲渡するか、または乙の相続分をABに相続登記をする等した後に第三者に贈与する。

甲の遺産分割協議をする場合は、遺産分割協議にABが乙の相続人として参加し、相続分は不要との意思表示をしてその結果を協議内容とする。

というところでしょうか。

もちろん、乙が生前に甲の相続分を譲渡していれば、ABはその譲渡契約の当事者としてその契約義務を履行する地位を承継します。

しかしその場合でも、契約義務の履行のために関与せざるを得ないということにはなりますので、やること(サインしたり印鑑証明書を提出したり)はわりと同じということになります。

 

 

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